『千夜一夜物語』(アラビアン・ナイト)の「アリババと40人の盗賊」の物語に登場する女奴隷。
家事全般から葬儀の仕度まで卒なくこなし、宴席での剣の舞、家にやってきた盗賊団を人知れず始末するなど、賢く雄々しい女性。
名前は、本来はアラビア語「マルジャナー Marjanah مرجانのようで、
ヨーロッパでいう「コラリンcoralline(さんご色の [コラール サンゴ])」の意味だという。
アラビア語で「マルジャン Marjan [赤さんご]」からでているという。(赤サンゴは特に高価らしい)
物語では、アリババが盗賊団の宝物庫と、隠し扉を開ける呪文をたまたま知り、アリババの兄もそれを知るが
アリババほど用心深くなく盗賊団に殺された。
アリババが宝物庫の中から兄のバラバラに惨殺された亡骸を回収、モルギアナに葬式の手配をさせる。
盗賊団に知られては皆の命にかかわるので、モルジアナは智慧を働かせ、医者に薬を何回か求めにいき、
病を患って死んだふうを装う。
また経かたびらの職人を、目隠しして場所をわからなくして連れてきて、死に装束を作るだけでなく、
斬られた体も縫い合わせさせた。
また、盗賊団が最近死んだものを聞きまわって、アリババの家の門に目印をつけていった際、おかしいと察したモルジアナは
周囲の家を同じ目印だらけにして難を逃れた。
しかし、とうとう盗賊団がアリババの家を襲おうと、油商人に扮装して、
宿を求めてきた。
たくさんの油の皮瓶には37人の盗賊がひそんでいた。
夜中に油が切れたので、油をもらおうとモルジアナがくると「おかしら、ころあいですか?」と皮瓶の中から声がしたので、
「まだだ」と答え、
油の入ってる瓶から油を取り、煮えたぎらせ、ひとびんずつ注いで37人を煮えたぎった油で焼き殺した。
主人たちに知らせて、機会を逸してはまずいと独断で始末した。
盗賊の頭領は、合図をしてもでてこないので確認したら皆死んでいたので、ひとり塀を越えて逃げた。
ひとりになった盗賊の首領は、今度は商人に扮し、市場に店を借り、アリババの甥(死んだ兄の子)の店の隣になって親しくなる。
アリババの甥だと知り、家で豪勢に歓待し、甥がアリババの家でお返しに招待するように仕向けた。
ふところに短刀をしのばせ、アリババを殺そうとしていたが、モルジアナは盗賊だと気づき、
踊り子に扮して剣の舞を踊り、ご祝儀をもらうふりをして近づき刺し殺した。
アリババは何度も優れた機転と智慧で救われたので、女奴隷、はしためを自由の身にして、甥と結婚させた。
盗賊団の秘密の宝を完全に手に入れアリババの一族は栄えた。
この物語は「アラジンと魔法のランプ」と同じく、『千夜一夜物語』のアラビア語原典になく、後に写本などで別の物語が挿入されたの
だろうともいわれる。
なお物語中、アリババがハンマーム(イスラム浴場)へ行く場面など、よく風俗が伝わるようだが、
葬儀などの習慣はガランがヨーロッパ風になおしたかもしれないらしい。(棺に入れ釘を打つところなど?)
19世紀頃の翻訳事情等考慮すべきところがあるようで、イスラム文化の描写が全てそのままとは限らないようだ。
葬儀でモルジアナが「泣き女」の役目をしているが、これもイスラム風で正しいか確認したい。
しかし、モルジアナの万能女召使ぶりは、メイド服を着ていないことが悔やまれるほどである。
余談だが、
アニメ作品「NG騎士ラムネ&40」は企画段階でアリババと40人の盗賊等アラビアンナイトをモチーフとした。タイトルの「40」や、
主人公「馬場ラムネ」(アリ・ババ Ali babaのババw)に片鱗が残る。
2012年アニメ化もしたコミック作品「マギ」は、主人公「アラジン」や「アリババ」「モルジアナ」(モルギアナ)などの
キャラや、舞台も西アジアや中国などアラビアン・ナイトの雰囲気で描かれているようだ。
・
千夜一夜物語〈第8〉―バートン版 (1967年)
・日本大百科全書 (小学館)
・大辞泉 (JapanKnowledge)
他
関連項目一覧
イスラーム (文化地域)
女神、女傑 (大項目)
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