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タナバタ たなばた 七夕

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七夕は「しちせき」とも読む。日本の伝承。織女(しょくじょ)と牽牛(けんぎゅう)の物語や、 乞巧奠(きっこうでん)という 機織などが巧くなるように乞う中国の祭りが日本に取り入れられ、織姫(おりひめ)、彦星(ひこぼし)と和名もついた。 七夕の雨(一説には前日の雨)を、会えない二人が泣く涙だという「催涙雨(酒涙雨)」、または牽牛、彦星が牛車 を洗う「洗車雨」などというらしい。

年に一度、天の川(天の河)をはさんで逢う二つの星(織姫は琴座のベガ、 彦星は鷲座のアルタイル)、 それが旧暦七月七日の夕べなので「七夕」 というが、読みが「たなばた」なのは「棚機」、はたおりのこと、または織姫の別名「たなばたつめ(棚機津女)」 のこと。
万葉集2041「秋風の吹きただよはす白雲はたなばたつめの天つひれかも」
734年には聖武天皇が七夕の詩歌を作らせた(七夕の初め)
彦星(牽牛星 アルタイル)詳細
織姫(織女星 ベガ)詳細

また、竹に短冊をつけて星に祈ることも別に中国から入り、これらがひとつになって日本の「七夕(たなばた)」となった。 地方地方で様々な風習がくわえられ現在にいたる。「星に願いを」たくすというのは非常にロマンチックである。

牽牛と織姫の物語などは元は中国だが、日本の「たなばたまつり」のスタイルは日本独自のものである。
この星に女性が技芸の上達を乞う、祈ればかなえられる(乞巧奠きっこうでん)といって、 奈良時代から貴族社会では星祭りをした。 日本固有の習俗では、七日盆(盆初め)に当たり、水浴などの禊(みそぎ)をし、両者が合体した行事になっている。
本来は陰暦で行うのだが、現代では他の節句と同様陽暦の7月7日(またはその前夜)に行うことが多い。 東北地方などでは月遅れの8月7日に行うようだ。 星祭(ほしまつり)、織女祭(しょくじょさい)などとも。中国伝来の行事、日本古来の伝承、くわえて 盆行事の一環としての行事など 多くの要素が入り混じって今日に伝わる。

奈良時代の宮中の行事として中国伝来の乞巧奠が行われ、桃、梨、茄子(ナス)、瓜、大豆、 干鯛、薄鮑などを清涼殿の東庭に供え、 牽牛・織女の二星を祀ったという。『延喜式』(えんぎしき)には織部司(おりべのつかさ)の行事 として7月7日に織女祭が行われたという。 宮廷や貴族の習俗としてのみのもののようである

室町時代になると七夕に歌を供える風(ふう)が入り、7という数にあやかって、7種の遊びを行ったとも。
江戸時代には武家の年中行事としても定着。五節供の一つに定められた。 笹竹に五色の紙や糸を吊るして軒端に立てる風も江戸市中にみられた。 また長野県松本地方では、各家々の軒端に七夕人形といって、板の人形(ひとがた)に子供の 着物を着せて吊るし、 その年生まれた子供の無病息災を祈願している。 または小さな紙の人形を紐に連ねて吊るしている所も。
農民層はまた違った習俗となっていたようだ。

七夕には一夜水辺にこもって禊(みそぎ)を行い、翌朝送り神に託して穢(けがれ)を持ち去ってもらう ものであったともいい 、各地に伝承される水浴の習俗はその名残であるという。七夕にはかならず洗髪をする、食器類を 洗うものだという地域は広くある。
関東地方の北部では、人も牛馬の家畜も水浴びをし、睡魔を川に流す「眠り流し」ということを 行っている。
青森県弘前地方のねぶた行事も七夕の日のもので、ねぶたは「佞武多」という字をあてているが、 眠りを追い払う行事である。 秋の収穫作業を控え、仕事の妨げとなる睡魔、悪霊を追い払う行事だったのである。

七夕(たなばた)の名称の読みについて、日本では古く神を迎え祀るのに、乙女が水辺の棚に設けた 機屋(はたや) にこもり、神の降臨を待って一夜を過ごすという伝承があり、 これから棚機女(たなばたつめ)、乙棚機(おとたなばた)、さらに「たなばた」とよぶようになったと いう折口信夫の説があるという。
「たなばた(棚機)」という語自体は、はたを織ること、また織機や織る人のことで、女性が行うので 「たなばたつめ(棚機津女)」ともいった。 古事記(712年)上・歌謡には「天なるや 弟(おと)多那婆多(タナバタ)の 項(うな)がせる) 玉の御統 (みすまろ)」と。

古今・秋上「契りけん心ぞつらき七夕の年にひとたび逢ふは逢ふかは」
徒然草「七夕祭るこそなまめしかれ」
※旧暦では秋口になるので季語としては秋になる。

七夕は五節句のひとつでもある。
人日の節句 一月七日
上巳の節句 三月三日(ひな祭り、桃の節句)
端午の節句 五月五日(子供の日)
七夕の節句 七月七日
重陽の節句 九月九日(菊の節句)
他、
元日   一月一日(朝は元旦)

余談だが、遊戯王5Ds(ファイブディーズ)のED『-OZONE-』の歌詞は七夕をモチーフにしていて 「催涙雨」の言葉もみえる。オゾンより下なら問題ない。

参考資料
・日本大百科全書 (執筆者:鎌田久子)
・大辞泉 (JapanKnowledge)
日本国語大辞典

 

関連項目一覧
天の川・天河 (星,星座)
アルタイル(彦星 牽牛星)
ベガ(織姫 織女星)
中国 (文化地域)
日本 (文化地域)
星、星座 (大項目)

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