日本の歴史、伝承の刀、太刀(たち)。戦国大名、上杉謙信(1530-1578)にまつわる一文字の 太刀は二つある。
ひとつは、武田信玄との関わり。「敵に塩を送る」の格言で有名な話。
今川氏真と北条氏康の連携による
太平洋側から甲斐国への塩輸送道の封鎖を「不勇不義」とした謙信が日本海側に塩を求めた
武田勢の越後領内通過を黙認した。
このはからいで救われた武田信玄は、一振りの備前刀を謙信に贈った。
銘が「弘」の一字を残しすり潰されて、作刀者不明だが鎌倉中期作とみられる。
刃長81.9cm、反り約3.6cm。代々、上杉家に秘蔵され、現在は重要文化財。
もうひとつは上杉謙信が関東管領(かんとうかんれい)の上杉家を継いだことに関する話。
当時まだ「越後の虎」長尾景虎だった謙信が上杉憲政を保護し、家の存続のため幕府の許可を得て
景虎が上杉家を継いだ。その名家上杉氏に伝わっていた一文字派の太刀。
茎(なかご)に「一」とのみ銘があり作刀者不明だが福岡一文字派の太刀である。
江戸時代も上杉家に伝えられ、三嶋大社寄進後「上杉太刀」と呼ばれ、明治維新後は明治天皇へ
献上され御剣となった。
現在、東京国立博物館蔵。
参考資料
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名刀 その由来と伝説 (牧秀彦:著 光文社新書)
他
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