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キュウビノキツネ 九尾の狐 きゅうびのきつね >>関連項目一覧中国、日本の伝承・伝説の妖怪。白面金毛九尾の狐(きんもうきゅうび)、妖狐。尾の九つある狐。 古くは、平和な世に出るめでたい獣とされたが、後には、多くの年を経た妖狐とされた。 明時代(1368-1644)の伝奇小説「封神演義」で、妲己が九尾の狐の精とされたことも有名。 日本では中世頃に謡曲「殺生石」において美女、玉藻前(たまものまえ)に化身した妖狐の物語が有名。 中国の記述では、 前漢代(BC206年-)初期の「山海経 南山経」で「青丘の山。…獣がいる。 形が狐のようで、尾が九本あり、鳴き声が人の赤ん坊のようで、人を食う。逆に、この獣を食べた者は蠱(邪気)にあわない」とある。 西晋代(265-316年)の郭璞(かくはく 生没276-324年)が「山海経 大荒東経」の「青丘の国がある。狐がいて、九本の尾をもつ」に 「天下太平の時に現れて瑞祥になる」という注を付している。吉兆とのこと。 封神演義で妲己を九尾狐の精としているもとの説があるという。 南北朝時代[439-589年]の李邏(りら)が「千字文」の 「周伐殷湯(周が殷の湯を伐った)」の注釈で、妲己は九尾狐であると指摘。これがそうなのだという。 日本の延喜式(927年)二一・治部省には「祥瑞(中略)九尾狐 神獣也。其形赤色、」等とみられる。 韓国の民話でも人の肝(きも)を喰らう妖怪「九尾狐(クミホ)」と伝承されている。 日本中世期(1200-1300頃?)の謡曲「殺生石」の美女、玉藻前(たまものまえ)に化身した妖狐については、 鳥羽法皇の寵妃として婬酒(いんしゅ)で王を蕩(とろ)かし残虐な所業などさせたが陰陽師、安倍泰成に正体を見破られ、 那須野に逃げるが射殺され、霊が石と化し近寄るものを殺す殺生石となった。 しかし玄翁(げんのう)和尚の法力で狐の精魂は散滅させられた。 この話は天竺・中国・日本にわたって美女に化け王をたぶらかした妖狐譚として江戸期以降 「絵本三国妖婦伝」(1804 高井蘭山)、「玉藻前三国伝記」(1809 式亭三馬)ほか、人形浄瑠璃や歌舞伎にも作品ができ演じられた。 三国の美女は、のちに明の「封神演義」の影響をうけてから妲己(だっき)が取り入れられている。 ・謡曲「殺生石」: 班足太子の塚の神(天竺)-幽王の妃 褒姒(ほうじ)(唐)-鳥羽法皇 玉藻前(日本) ・「通俗武王軍談」(1705年 宝永二年): 九尾の狐-妲己(殷)-華陽[花陽]婦人(天竺)-褒姒(唐)-玉藻前(日本) *以降はこれが話の骨格として成立したようだ。 班足太子の塚の神、とは「神明鏡」では仁王経に「天羅国の班足王」が千人の王の首をとって祭ったという。 内閣文庫本聖徳太子伝では、周の幽王の宝宇妃、天竺の塚の神、日本では後鳥羽の院の上童、とされている。 謡曲「殺生石」では、三浦介義明と上総介広常の二人が「奈須野の化生の者」退治の勅をうけ、 「野干(やかん 狐の類、ジャッカルが語源とも) は犬に似たれば、犬にて稽古あるべしとて百日犬を射たりける、是れ犬追物のはじめとかや」といった話がある。 「御てうあい 石になっても 又わられ」という歌があるが 鳥羽法皇に御寵愛をうけ「新鉢を割る」(処女を犯す)、割られたのと、源翁(玄翁)に殺生石を割られたことをよんだもの。 余談だが、日本のアニメ・コミック作品では「うしおととら」の白面の者、「NARUTO -ナルト-」の人柱力の尾獣「九尾」が有名。 もちろん藤崎竜版「封神演義」の妲己ちゃんも忘れてはならない。 その他「かのこん」のヒロインは妖狐であり、金毛で九尾っぽい。特に近年妖怪ものに妖狐系はよくでてくる。 2010年に韓国で放映されたドラマ「僕の彼女は九尾狐(クミホ)」が2011年3月、日本でも放映された。 参考文献 ・日本架空伝承人名事典 (平凡社) ・ 中国神話・伝説大事典(袁珂:著 鈴木博:訳 大修館書店) ・日本国語大辞典 (ジャパンナレッジ) ・大辞泉 (JapanKnowledge) 関連項目一覧
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