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ヤシ 香具師 やし,こうぐし >>関連項目一覧


日本の歴史伝承上の職業(現代も存在する)。盛り場、縁日、祭礼などに露店を出して商売したり、見世物などの興行をしたりする。
また露天商の場所割りをして、世話をする。的屋(てきや)とも。歴史的には18世紀の記録がある。
「ヤシ」には様々な漢字があてられる(野士、弥四、野師、彌四、矢師、八師)。山師とも。

香具師の語源については、諸説があり、つまびらかでない。
「野士」は野武士の後裔であるとか、「弥四」は弥四郎という者が初めて売薬行商をしたから等。

「こうぐし」とも読み、「ヤシ」と同じだが、「香具[薫物(たきもの)・香道具]を作り、また、売る人。香具屋」のこともいう。
香具売りは17世紀にはいたようだが、そこから18世紀までに、祭礼、縁日などの人の集まる所で、日用品や食品などを並べ、 独特の口調や大声で品物の説明、宣伝をしながら、ことば巧みに売る大道商人、路上で見世物興行などもする人のこともいうようになった。
そのようになった理由などはよくわかっていない。

このような一種の露天商については18世紀初めに京都、大坂、江戸の香具職たちが職法の式目(法規)を改定した記録があるので、 そのころには生まれていた職業と考えられている。中国古代の伝説上の帝王である神農氏を守護神としているrしい。
十三香具師(十三の職種)といわれ、薬売り、居合抜き、曲鞠、果物売り、小間物売りといった小商人と遊芸人とであった。 薬売りが主で、居合抜き、曲鞠などの芸は売りつける手段、パフォーマンスでもあった。
「香具師薬・野師薬(やしぐすり)」といわれた。いかがわしい薬だという。
幸田露伴の「艷魔伝」(1891)には「髪の毛薄赤く又は縮れたるに染粉や野師薬(ヤシグスリ)はよろしからず」とある。

19世紀、江戸幕府は取締令を出している。19世紀後半からは的屋ともいわれるようになった。
各地に露天商組合ができ、1924年(大正13)には大阪で香具師同士の生活保護策も講じられた。

集団は家名をもち、 博徒のように一家の親分、子分、兄弟分、新入りといった縦の秩序は厳しいという。入門・破門・破門解除といった手続も、 本人の行状と親分の裁定により決まる。仁義、旅の慣行もあり、その規律は今日もほとんど同様である。

近世では以下のようなものが出現した。
大〆(おおじめ):空き地で弁舌巧みに薬などを売る
転(ころび):地面に座るか卓を置いて新案品を売る
床店の三寸:盛り場などの組立て式の、夜見世また縁日で女子供相手に風船・飴などを売る小店

近代になり、興行師の高者(たかもの)、縁日の植木屋の木(ぼく)というような 商売の仕方による種別が加わった。

ややアウトロー的、いかがわしさをともなう商売人をいう言葉だが、 現代のネット用語(スラング)としても使われている、いた。(「ヤツ[奴]」の置き換え的用法らしい)

参考文献
・日本国語大辞典 (ジャパンナレッジ)
・日本大百科全書 (執筆者:遠藤元男 小学館)
 [香具師の生活 (添田知道著 1964 雄山閣出版)]
・大辞泉 (JapanKnowledge)

 
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