アッキヌフォート。ケルトの神話伝承、おそらく「マビノギオン」を元にするだろう物語「トリスタンとイズー」に出てくる
騎士トリスタンの弓。
しかし弓Arcとはいうものの、罠(仕掛け弓?)、またはアビリティ(能力)であるともいう。
フランス語の直訳は「必要とされる弓」。「必中の弓」という表記や物語中かならず当たる弓という
表現があるようだ。
「フェイルノート Failnaught」という異称があるようだが出典未詳。(失敗がない の意か)
フランス語のカタカナ表記がなかったのでArc qui ne faut(アッキヌフォ)、(冠詞付 l'arc qui ne fautラッキヌフォ)
と仮に載せるが詳しい方の適切な提案があれば修正したい。
余談だがArcアルクは弓なりの形、会釈、アーチ状の門、橋、虹(L'Arc-en-Ciel 空に架かる橋)など
にも使われる言葉。
『Tristan and Isolt: a study of the sources of the romance』(Gertrude Schoepperle Loomis:著)に、
「Tristan's ability to imitate the songs of the birds, the arc qui ne faut, ...」とある。
『トリスタン伝説 流布本系の研究』(佐藤輝夫:著 中央公論社)
『愛と剣と フランス中世文学集 2』(新倉 俊一/天沢 退二郎/神沢 栄三:訳 ベルール版)
などによれば武器の名前ではなく罠の名前であるようである、またベルール版の物語にしかないよう
である。
弓の文化史的には仕掛け弓(狩猟などで用いる)は存在するが、敵を倒すのに用いる場面を想像すると
まるでニンジャのようであるw。
岩波文庫の邦訳『トリスタン・イズー物語』(ベディエ:編 佐藤 輝夫:訳)では、
イズーと森で暮らしてる時につくった「無駄なしの弓」は人間でも獣でも狙った場所に
必ずあたるという内容があった。これはベルール版も参照してまとめられたからか。
なおベルール版の原表記(フランス語)
1752 Trova Tristan l'arc Qui ne faut.
En tel maniere el bois le fist
Riens ne trove qu'il n'oceist.
Se par le bois vait cerf ne dains,
(eBook Beroul LE ROMAN DE TRISTAN)
[Googleキャッシュ]
アビリティか武器なのか、といった話題はケルトの英雄クーフーリンの槍(技)ゲイ・ボルグでもみられる。
『トリスタンとイズー』物語は様々な版がある。以下1例。
・ペルール(Beroul)版(3000行程度)
・トマ版(3000行程度)
・作者不詳(1500行程度)
・アイルハルト・フォン・オベルク版
・ゴットフリート・フォン・シュトラスブルク版
・13c世紀の教訓詩「恋人の栞」
・フランスの小詩
*クレチアン・ド・トロア、ラ・セーブル版は消失。
参考資料
・
トリスタン・イズー物語 (岩波文庫)
・
ケルト文化事典
他
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