フェンリル狼(フェンリスウルフ)Fenrisulfrとも。 ロキとヨトゥンヘイムの女巨人アングルボザの子 不幸と禍いを起こすと予言した神々はヨルムンガンドル(ミドガルズオルム)、ヘルと 3人のロキの子らを捕らえ、蛇は世界を取り巻く海に投げ入れ、ヘルはニヴルヘイムに投げ入れ、 フェンリルは手元で育てテュールだけが餌をやる勇気をもっていた。しかし日に日 に大きくなる狼に神々は足枷をつくることにした。
最初の枷レージングをつくり、これで自分の力を試すようにいった時、フェンリルは、 この枷は自分の力をしのぐと思わなかったのでつけさせ、一度で壊した。
次の足枷ドローミは頑丈だと思ったが自分の力も増していると思ったのでつけさせ、 懸命にあがき壊した。
神々はドヴェルグにグレイプニルという足枷をつくらせた。 (猫の足音と女のひげと山の根、熊の腱、魚の息、鳥の唾でつくられた) 絹紐のように滑らかでやわらかくできあがったが頑丈であった。 神々はこれをちぎるよう言ったが、フェンリルはこんな紐をちぎっても名前をあげられないし、 細工と策略でつくりあげたのなら足にはつけさせない、この紐をつけるのは気が進まない。 まやかしなしでつくったという保証に誰か口の中に手をおくなら試そう、と言った。 テュールだけが勇気をもってその役についた。
フェンリルは脚を縛られたこの紐を切れず、もがくほど紐はくいこんだ。フェンリルは 騙されたことを知りテュールの片手を噛み切った。
神々は足枷についていたゲルギャという綱を大きな板状の石ギョッルに通した。そして 石を地中に埋め大石スヴィティをもっと深く埋めて、留め具にした。 激しくもがいて噛み付こうとするフェンリルの口に剣をつっこんだ。 柄は下あご、切っ先は上あごにつきささった。 フェンリルはラグナロクまで横たわったままとなった。 口から流れ出たよだれはヴォーンという川になった ラグナロクの時まで殺さなかったのは神所、聖域を狼の血で汚せなかったという
ラグナロクの時、神々との戦いで、フェンリルはオーディンを飲み込んで殺した。しかし
オーディンの子ヴィーザル(ヴィダール)がきて、フェンリルの下あごを片足で踏みつけ、
上あごを片手でつかんで口を裂いてフェンリルを殺した。
参考資料
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中世文学集〈3〉エッダ;グレティルのサガ (ちくま文庫)
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北欧神話 (菅原邦城:著 東京書籍)
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エッダとサガ―北欧古典への案内 (新潮選書)
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北欧神話と伝説 (グレンベック 講談社学術文庫)
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北欧神話物語 (クロスリィ・ホランド:著)
他
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