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英雄スランジャナと魔物レンブ・グマラン>>関連項目一覧

(インドネシア)

ある時、天の大神バタラ・グル(シヴァ)の宮殿を建てるため、全ての神がそれぞれ礎の石を持ってくるよう命じられた。蛇の神デワ・アンタは、手も足もなく手伝えないため、おふれに来たバタラ・グルの使いの神の前で涙を流した。すると涙は3つの卵に変わり、それをバタラ・グルの元へ届けることにした。

途中でオオワシに会い、どこへいくか聞かれたが、口に卵をくわえて喋れないでいると、オオワシが怒り、嘴で頭を突ついてきた。それで卵が二つ割れてしまい、それぞれ豚の子がでてきた。

この子豚たちを、ある雌牛が自分の子牛と一緒に育てた。この子牛は後に魔力をもった大牛レンブ・グマランになり、豚たちは弟分の魔物、サン・カラブアット、サン・ブドバイとなる。

残り一つの卵を届けると、バタラ・グルは「温めて孵ったものをもってくるように」と言った。その後、卵から生まれた女の子をバタラ・グルの元へ連れていった。その女の子はバタラ・グルの養女になり、デビ・スリと名づけられ、美しく気立ての良い、誰からも好かれるようになった。

あまりの美しさに、バタラ・グルは、自分が掟に背いて結婚すると言い出してはいけないと思い、仕方なく デビ・スリを毒殺した。

デビ・スリの墓から誰も見たことのない植物、稲が生えてきて、米がたくさん獲れた。この不思議な出来事に、バタラ・グルは、これがあればもう飢えることはないだろうと、地上のパジャジャラン国の王に稲を与えた。 天からの使いが稲作の仕方を、女神が料理の仕方を教えた。

隣の国の商人が全部買い取ろうとしたが、「これは天国のものなのです」と断った。腹を立てた商人は、レンブ・グマランにパジャジャランを滅ぼすよう頼んだ。レンブ・グマランは、凄まじい風を起こし、稲を根こそぎなぎ倒した。スランジャナという若い神が送られた。スランジャナも風を起こし、稲を元に戻した。

レンブ・グマランは手下の二匹の豚を呼び、まず何百もの野生の豚に田んぼを荒らさせた。スランジャナは濃い霧であたりをつつみ、豚を立ち往生させた。次にグマランは何千匹というネズミをけしかけ、茎をかじらせるが、スランジャナはネズミの通り道に毒を仕掛けたのでネズミは皆死んでしまった。さらに3匹の魔物は何万羽の鳥に穂をついばませるが、スランジャナの魔法で追い払らわれた。

業をにやしたレンブ・グマランは、森のあらゆる獣に国中、町も村も壊せと命じた。老人も若者も皆、スランジャナの味方になり、神の指図で穴を堀り、罠を仕掛け、木の上には網を結び待ち構えた。グマランを先頭に獣たちは森から出てきて襲ってきたが、多くが罠にかかった。レンブ・グマランは劣勢なのを見て一騎打ちを申し込んだ。

レンブ・グマランは、木の幹で砥いだ角で突進してくるが、スランジャナはギリギリで身を翻してかわし、足をひっかけ倒した。もんどりうって地面に倒れるレンブ・グマラン。そんな有様を繰り返すが、身軽なスランジャナをとらえることができない。スランジャナはレンブ・グマランの片足を掴み、空中で振り回した。ついにレンブ・グマランは許しを乞うた。

3匹は「永久に田んぼの番をする」という約束をして赦された。そして田んぼは護られ、国の人々は幸せに暮らした。

 

関連項目一覧
インドネシアの物語 【文化地域項目】
シヴァ 【辞典】
レンブ・グマラン 【辞典】
インドネシア 【辞典】

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