ゲヘナを地獄を指す語とするのはユダヤの伝承、またキリスト教神学によるものだが、詳細な内容はキリスト教神学によるものらしい。
もともとはエルサレム旧市街の南方の谷間をゲヘナといい、偶像礼拝が行われ、またゴミの焼却所となって煙がいつも
たちのぼっていたので、キリストの時代には地獄の別名とされたという(マタイ5・12)
14世紀の神学者によって考えられた7つの天と7つの地のひとつ、第六大地アルクァ(「地」の意) の大陸のひとつに、ゲヘナと7つの地獄があるという。
ゲヘナは地獄全体を指し、以下7つの層がある。
シオウル(ヘブライ語で窖、洞窟、子宮の意)
破滅
死の影の門
死の門
沈黙
腹
最下の窖(こう、穴倉の意)
ゲヘナは人間の住む大地の60倍あるといわれる。 ゲヘナの宮殿のそれぞれに6000の家屋があり、 そのそれぞれに、罪人を苦しめる炎と胆汁の器が6000あるという。
ゲヘナの語はもともとはソロモン王の崇拝したモレク神に捧げられた炎の祭壇をさす言葉。 初期のユダヤ人は、エルサレム郊外のヒンノムの谷の モレクの祭壇に最初の子を生贄に捧げていたが、唯一神ヤーウェ が後にこの蛮行をやめさせた。 神殿は見捨てられ、跡地は屑山になり、犯罪者や社会の除け者の死体焼き捨て場になった。
このような忌まわしい背景がユダヤ(ヘブライ)人の心に地獄として 根をおろしたようだ。
絶え間ない不断の拷問が行われるという考えはキリスト教徒 のものらしい。 不断の拷問はさまざまな復讐の天使、拷問の天使、懲罰の天使、 憤怒の天使、破壊の天使によって熱心におこなわれるとされる。
地獄で人々を苦しめるのは天使なのかデヴィル、デーモン なのか、つじつまの合わない推測は初期の地獄論によくみられるようだ。
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