幻想世界神話辞典 〜
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死神 Death >>関連項目一覧日本語における死神(死に神)という語は、2つに大別できる。1つは日本にもともとある死神。 もう1つはヨーロッパ的な死神のイメージである。 日本語にみる死神は、「人を死にさそう、人に死ぬ気をおこさせる神」であるという。「死神にとりつかれる」という。 近世、歌舞伎芝居や花街の巷などで口にされるようになったという。浄瑠璃「心中天網島」 にみえる。また岡山では彼岸入りの日アケの日ともに参らないで、片参りすると死神がとり憑くという。 静岡浜松地方では人が山、海、鉄道などで死んだ後へ行くと、 とり憑かれるという。 死んだ人は「死に番」といい、次の死者がでるまで浮かばれないという。 他、中国の伝説に生と死を司る南斗と北斗がいる。高名な占い師に寿命がないことを知らされた若者が何とかできないか頼み込んで、ある場所で碁を打つ二人に脇からそっと酒と食べ物をすすめろという。言われた通りにすると、賄賂をうけとってしまった、と若者の寿命を延ばす。北斗が死を司り、南斗が生を司る。この話ではわりと普通の姿の2人がでてくるが、古典落語「死神」の汚いなりの死神はこのイメージに近い。(この底本はイタリアの歌劇の翻案だという) 現代ではこれにヨーロッパのイメージが重なっていると思われる。ヨーロッパのイメージとは、 大きな鎌をもった骸骨、というものであろう。 18世紀のフランスのタロットカードのデス13(Death XIII)は、まさしくこのイメージである。 しかし、他のタロットでは死の騎士(骸骨が鎧を着て馬に乗っている)という例もある。 もともと、死の訪れに迎えに来る者のイメージは死の天使であったという。 ちなみに日本語の「死神」と直接対比できる英語などはないと考える。あるとすれば死、デスDeathそのものだろう。 骸骨が死の象徴とされるのは世界中でみられることなので、特別ではない。あとは死の前兆をもたらす存在の伝承もみられ、 その姿はやはり骸骨の姿をとるものもある。 年代は不明だがアンクーをあらわすという像には骸骨の人体に大鎌を持つ、というものが実在する。 またボルヘスの著作「地獄の辞典」の不死の項目では、 デンマークの伝説で、ある女性が教会を建てた時、それが建っている間生き続けること願 って、その通り死神が彼女のもとを訪れず、隣人の戸はたたいたが彼女には鎌の先さへ見 せなかった、とある。19世紀ヨーロッパでの死の訪れのイメージを伝えるものだろう。 また死者の舞踏Danse des mortsというものがあり、 中世起源の風俗であるといい、絵画のテーマに多くみられる。 カーニバルの時、しばしば死者の仮面をつけて踊ったのがはじまりで、この仮装 をした者は誰とでも踊れる特権をもち、相手がおびえる有様をまわりは楽しんだという。 やがて墓場で死者のための舞踏おこなうための仮面になったという。 骸骨の舞danses macabres(ダンス・マカブル)という呼び名が定着し、15、15世紀に隆盛きわめ、 寺院や墓地の壁にその様の絵が描かれた。 このようなイメージがヨーロッパでの「死」「死の訪れ」のイメージであり、日本の「死神」 というイメージ、言葉と結びついたのではないだろうか。 関連項目一覧
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