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ヴァルキューレ Valkyrie (ヴァルキュリア,ワルキューレ)

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 日本語カナ表記では、ヴァルキュリア、ワルキューレ、バルキリー、ヴァルキリーなどの表記も見られる。 ゲルマン、北欧神話の伝承。各地のゲルマン民族で共通して信仰されていた戦好きの女神。 「戦いで倒れる運命の戦士を選ぶ者」の意。

以下は各文化圏での名称。

名称 地域
イディージー*Idisiドイツ
ヴァルキュリヤWalküre ドイツ
ヴァルキュリャーValkyrjaノルウェー語
 Valkyriaスウェーデン
ワルキュリエ デンマーク?
ウォエルキュリーWoelcyrieアングロサクソン語
ヴァルキュリャvalkryjaアイスランド?
ヴァルキューレValkyrieアイスランド?

*イディージーはノルニルの別称イディスIdis系の名か。

オーディンの、金色に輝く大広間ヴァルハラで召し使いとして、オーディンの 客人をビールや蜂蜜水でもてなす。また、地上のどこかで戦いが起きた時、オーディンの命をうけ、 倒れるべき運命の戦士たちを指定するため戦場に赴く。また女神に好意的な側に勝利をもたらす。 鎧、兜、盾、鉄槍で武装し駿馬を駆って空を行く姿は、ヴァルハラへと招かれる死の運命 に選ばれた英雄にしか見ることはできない。

詩人達の謳ったヴァルキューレの姿は、穂先に炎の環を持つ槍を手にし、兜をつけ、 馬に跨り天を駆ける女神だった。ヴァルキューレの馬のたてがみは、谷には露のしずく、 森には霰を降らせた。 また各物語では、「白鳥の翼をまとった」「黄金の鎧をまとった」、という表現もみられる。

ヴァルキューレには白鳥の翼を持った少女に変身する力があり、時に人気のない森の奥 の湖や池の近くに舞い下り、翼を脱いで休む。翼を脱いでいる間は人間の姿になり、 誰かに翼を奪われればその者の言うことを聞かざるをえない。

エッダなどににいくつか名前がある。
「巫女の予言」(30)「彼女[巫女]はヴァルキュリャたちを見た はるかかなたより来たり ゴート族[戦士たち]のもとへ馬はしらさんとする女たち。 楯もつはスクルド、 他のものはスコグル  グン、ヒルド、ゴンドゥル そしてゲイルスコグル 今ははやその名はあげられた、 ヘリャン[オージン]の女たち ヴァルキュリャたちは、 大地のうえを 馬はしらさんとする女たちは。」 「グリームニルのことば」(第36章)「フリストとミストに 私は角杯を持ってきてもらいたい、 スケッギオルドとスコグル  ヒルドとスルーズ フロックとヘルフィヨトゥル ゴッルとゲイラホズ そしてレギンレイヴ 彼女たちはエインヘリャルにビールを運ぶ。 これらはヴァルキュリャというのだ。 」(『北欧神話』(菅原邦城)P67、P99)

スノッリの書いていること(ギュルヴィの惑わし 36章)を要約「彼女らをオージンはどの戦いにも送り、彼女らは人びとに死の運命を選り定めて勝利を決する。グズとロタ、そしてスクルドといういちばん若い ノルンがたえず馬にまたがって歩いては戦死者を選び出して戦いを決するのだ。」(『北欧神話』(菅原邦城)P68)

上記のように、エッダの「巫女の予言」などの中でヴァルキュリャの名がでてくるが、スコグル、グン、ヒルド、ゴンドゥルの名は戦い、または戦いの喧騒を意味する言葉で、他のヴァルキュリャの名も類似の意味を持つという。
菅原邦城氏の『北欧神話』でも、「大多数のヴァルキュリャの名は、文字通り「戦い」を意味する語として、またこの種の語と各種の武器を表す他の語との合成語として解釈される。」と書いている。

 
余談だが
この女神をモチーフにしたワーグナーの作曲の楽劇ワルキューレ(ヴァルキューレ)が 有名である。
またナチスのヒトラー暗殺計画の作戦名がワルキューレ(ヴァルキューレ)とされていた。 2009年にはこれを題材にした映画が作られた。

神話・伝説に語られるヴァルキューレは関連項目を参照。

参考資料
北欧神話 (菅原邦城:著)
古代北欧の宗教と神話 (1982年)

 

関連項目一覧
ゲルマン,北欧 (文化地域)
ヴァルホル(ヴァルハラ) (オーディンの館)
ブリュンヒルド (ヴァルキューレ:美女)
エルルーン (ヴァルキューレ)
グン (ヴァルキューレ)
シグルーン (ヴァルキューレ)
スワワ (ヴァルキューレ)
フェンヤ (ヴァルキューレ)
フラドグド・スヴァンフヴィート (ヴァルキューレ)
ヘルヴェル・アルヴィト (ヴァルキューレ)
ミスト Mist (ヴァルキューレ)
メンヤ (ヴァルキューレ)

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