ウルスラグナともいう。イラン神話の勝利の神。インド神話のインドラにあたる。
インドラの形容語ヴリトラハンと共通で「障碍を打破る者」の意味。(ヴリトラを殺す者)
(イランではインドラが悪魔の地位に降されたが形容語のみが独立した神格として崇拝)
国土の守護神で、特にササン朝での信仰が盛んだった。
ウルスラグナはゾロアスター(ザラスシュトラ)に対し十種の姿(化身アヴァターラ)をとって出現したという。
1.風 2.雄牛 3.馬 4.駱駝 5.野猪
6.若人 7.大鴉 8.雄羊 9.山羊 10.人間
大鴉の、鳥の羽根には神秘的な力が宿ると考えている。
あるいはザラドゥシュト(ゾロアスター教)においてはヤザタの一人であり様々な姿に変身するという。
5回目の変身で鋭い爪の野猪になるという伝承がある。鉄の脚、鉄の尾、鉄の顎だという。
一ヶ月30日にわりあてられる特定の神霊で、20日にわりあてられ、対応する讃歌のヤシュト書はワルフラーン・ヤシュト。
(ワルフラーン[ヴァフラーム]はササン朝の諸王のことで、ウルスラグナの名に由来)
ミスラ神の伝承の中にはミスラの武器に鋭い牙のウルスラグナという猪があげられている。 「鋭い牙の、近づきがたい、荒れ狂う野獣--ウルスラグナは背骨を粉砕する。彼はすべてのものを一撃で破壊する 。彼は契約を破った人間の骨と髪の毛、脳髄と血と泥と混ぜ合わせてすりつぶす」といった伝承がある。
ミフル・ヤシュト
彼(=ミスラ)の前には、アフラによりて創られしウルスラグナが行く。
彼の者は、勇み立ち、鋭い歯と牙を有せる雄猪の姿にして、
[その]猪は、(獲物=ミスラの敵)一撃にて打ち殺す者、近づくべからざる怒れる者、
斑なす顔の雄強なる者、
前後の脚は鉄製で、鉄の腱、鉄の尾、鉄の顎持てる者。
彼は、猛烈さと共に雄々しき勇気を持し、敵に向かって突進し、
戦いにて敵を打破る。
彼は[敵の]背骨-生命の柱にして活力の源たる背骨を打毀つまでは、[敵を]打破ったとは思はず、攻撃したともかんがえず。
彼は忽ち(たちまち)にして、すべてを粉々に切り刻む。
ワルフラーン・ヤシュト
「総ての邪悪なる者は、我が身体に宿りし力とウルスラグナ(勝利)を怖れよ」
「アフラの創り給いしウルスラグナを我らは祭る」
国王、王子、ハオスラワフの後裔、カウィ王朝のウサンがウルスラグナを所有するという。
彼は、ミスラを欺く人間たちの骨、毛、脳髄、血を、忽ちにして、大地と混ぜ合わす。
参考資料
・
ペルシアの神話―光と闇のたたかい (世界の神話5)
・
ゾロアスター教 (講談社選書メチエ)
関連項目一覧
イラン (文化地域)
ミスラ (神:太陽)
インドラ (インド:神)
武器 (大項目)
(C) 幻想世界神話辞典 - GENSO SEKAI Myth dictionary