日本の伝承、伝統にみられる人の形を木や紙、土などで作ったもの。 古くは信仰の対象、神霊の依代(よりしろ)にする、または厄や穢(けが)れを負わせて流す、 呪詛の対象物にするなどした。
中世以後は愛玩・観賞用として発達。演劇にも用いられたり、 ひな祭りの雛人形の原形、 平安時代のままごと遊び「ひいな遊び」の人形などがあった。
ひとがたの意味は、
・「身代わり」の意
源氏物語(東屋)で「かのひとがたの願い(身代わりにしたいのぞみ)」
・人形(にんぎょう)の意
浮世草子(胸算用)「ごまの壇にからくりいたし白紙ひとがたに土佐踊りさすなど」
・呪術的意味あい、「かたしろ(形代)」、または人形(ひとがた)送り
源氏物語(須磨)には「陰陽師召して祓ひさせ給ふ。舟にことごとしきひとがた
乗せて流すを」とある。
流し雛 ひとがたをつくり厄を負わせて川に流す
三月上巳(じょうし 最初の巳の日)、かたしろで身体を撫で身の穢れや災いをうつし負わせ川や
海に流した。
疫病送り 疫病が流行した時、疫病神を象徴する藁人形を作り村中を
まわり村はずれで焼く、または川や海へ流し村外へ送り出す。
ドロボウオクリ 盗難あった時、藁人形つくり村境で竹槍で突く。
以上の神送り的なもの以外のもの。
お人形(にんぎょう)様 福島県田村郡船引町 丘のうえに見下ろすように立つ
字屋形に立つのが男、朴橋(ほうきのばし)煮立つのが女。一対で悪疫の侵入を防ぐ。
正鬼(しょうき)様 新潟県東蒲原郡三川村熊渡で三月八日にこの人形をつくり、
願主の名と病んでいる部分を記入した紙をつけた藁を持ち寄り、人形に組み込む。そして集落の
はずれに老木に立てる。
オシラ遊び 東北地方 桑の木でつくった二体の男女(または姫と馬、
月と日等)の人形、オシラ様の前でイタコが神降ろしの祭文を唱えながら人形を両手にもって
交互に高くかざし、動きがとまったところで神の言葉が下される。
丑の刻参り 丑の刻、午前二時頃憎い相手をかたどった人形を神社の神木
や鳥居に打ち付けると満願の日にその相手を呪い殺す。
陰陽道でが人形(ひとかた)を使い、 自分の穢を拭い去る撫物(なでもの)という呪術がある。この人形を式神の様に使役する呪術もある。 紙を切って人形を作り床にならべ禹歩(うほ)の呪術を行い、口に含んだ水を紙の人形に吹きかけると 紙人が起き上がり動き出すという。術者の言う通りに動き目的を果たすと戻ってくるので、 また水をかけ禹歩を行うとただの紙に戻る。「剪紙成兵術」(せんしせいへいじゅつ)と呼ばれる。 竹で骨格を作ったものや木を削った人形が用いられ呪いをかけるのに使われるという。
人形には、人に似せた姿ゆえに、また宗教的・呪術的に用いられるものでもあることから様々な 伝説が伴う。 世界各地にもみられる人形については大項目を設けて記述する。
参考資料
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関連項目一覧
ヒナマツリ(ひな祭り) (祭り)
初音人形 (物品)
オートマタ (ヨーロッパ:自動人形)
デウス・エクスマキナ (古代ギリシャ:演劇,人形)
マトリョーシカ (ロシア,人形)
ジュブツ(呪物) (世界、日本:呪術、魔術、呪物崇拝)
日本 (文化地域)
(C) 幻想世界神話辞典 - GENSO SEKAI Myth dictionary