ロシアの英雄叙事詩にでてくる勇士。イリヤ・ムウロメツと共に、キーエフ公に仕える。
ソロガの商人ブレンコの息子。とてつもない美貌の持ち主だがとてつもない悪行もした。
また勇士デューク・ステパーノヴィチと伊達男対決をしたこともある。
またチュリーラの屋敷はボチャク川のほとりにあり、幅は7ヴェルスタ、鋼の柵をめぐらし、 70もの高殿が建っていて、扉には彫物細工、門にはガラス、敷居にはセイウチの牙と豪華絢爛。
馬は栗毛、サラセン渡りのくつわと手綱、純金の鞍を敷き山羊皮の靴、大鹿の毛皮を身に纏い青 と朱色の長マント、斑の腰帯、甲の頂は金という豪奢ないでたち。
50人の武者をひきつれ、キーエフで乱暴狼藉を働き、作物を荒らし、老人を打ち、若者を侮辱し、 乙女の操を穢した。
キーエフでの乱暴狼藉を咎めるため、公たちがチュリーラの屋敷を訪れた。その余りの豪華さに、 黒テンのシェードを纏ったブレンコ老人をチュリーラの食卓係と勘違いし、酒つくり係を チュリーラだと思った。
そして公たちが汗国の皇帝かリトアニアの皇帝かと間違えたのがチュリーラだった。
チュリーラは武芸にも秀でていて、馬から馬へ飛び移り、槍を投げあげては左右にもちかえる等、 公たちに武芸を披露して見せた。さらに、公たちに40の40倍のテンやキツネの毛皮、 金貨を贈った。
結局公たちは、「この度は裁きをつけないことにするから、公のもとへ大膳職、献杯役 としてくるように」と告げた。
公のもとにやってきたチュリーラは、その脅威的な美貌を明らかにした。
ブロンドのまき毛をかきあげれば、真珠の粒がこぼれるような、巻き毛がハラリとほつれる、 その仕草ひとつで、見とれた公妃アプラクシアが肉を切るナイフで手を傷つけるといった具合だった。
そして公妃は公に、チュリーラを自分の寝室の整え役にするように言った。
公は公妃の言うとおりにはせず、チュリーラを人に好かれる触れ番(酒宴に人を誘う)にした。
通りを触れ回るチュリーラを見て、尼僧は衣を裂き、若妻は下着を濡らし、 乙女はかぶりものを捨てたという。さらに、公妃アプラクシアは公に再び寝室の整え役 にするように言う。
このようなありさまだったので、公はチュリーラに帰るよう告げた。
参考資料
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ロシア英雄叙事詩ブィリーナ
他
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