幻想世界神話辞典 〜
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キンセイ 金星 きんせい (英語 Venus ヴィーナス) >>関連項目一覧古代より、肉眼でみえる5つの惑星のひとつとして、世界各地の神話伝承、記録にみられる星。 地球より太陽に近い側にある「内惑星」で、外惑星のように夜半の空に輝くことはないが、 夜明け前の東空や日暮れ後の西空にかなり高く、たいへん明るく見えるので、「明の明星」「宵の明星」として 天空の星のなかでも目立つ存在である。 金星の最大光度、極大光度はマイナス4.4等で普通の1等星の100倍くらいの明るさで、金星の光で地面に影がおちるほど。 この輝きは、金星表面をおおった雲が太陽光をよく反射するためだという。 古代シュメール以来、西アジアやヨーロッパでは美しい輝きのためか女神とされるようだ。 また神々の系譜では太陽や月と近い親族にあるようだ。 シュメール:女神イナンナ 戦いの女神。「天の主人」。豊穣を司る神。 バビロニア、アッカド神話:女神イシュタル(イナンナのアッカド語名) 「森の主人」。豊穣を司る神。美女。性格は激しい。 金星の輝きをヒゲにみたて「ヒゲのあるイシュタル」とも呼ばれた。 ひげの光芒がないときは不吉とされたという。 フェニキア(カナン):女神アスタルテ 戦い、豊穣の女神。牛の角を持つ。イシュタルと関係 ギリシャ神話:アフロディテ 美と愛の女神 アスタルテと関係。 ローマ神話:女神ウェヌス(ヴィーナス) 愛の女神。美の女神。アフロディテのローマ名。 エジプト神話:ハトホル女神 アスタルテと関係 牛の女神。太陽神ラーの娘、ホルスの母。愛と美の女神。 ※ギリシャ・オリエントの女神たちは、美女で戦いや豊穣を司り、太陽や月の娘で、名前に「〜の女主人」とつくような 共通する神格・特徴を持っている。金星との結びつきもそれぞれ持っているようだ。 キリスト教:ルシファー(ルシフェル) 堕天使。元は最高位の天使。 ベツレヘムの星:キリスト誕生の時、マギたちのみた星は金星の最大光輝のものか、という弱い説もある。(彗星説、木星・土星の合説など) 日本:天津甕星(あまつみかぼし) 高天原の悪神 明星(アカボシ 金星以外にアンタレスや流星など明るい星をあかぼしと呼ぶ場合もある) 中国:太白 太白星 白ひげの老人の姿などであらわされる。 モンゴル(ボリヤド):ソルボン 金星の神 古代メキシコ:ケツァルコアトル 豊穣,文化英雄神 ※アジア系では男神とされることが多いようだ。 その他の金星の名称など ニューギニア:マラトムトム アボリジニ:「太陽の母」 マヤ:金星は凶運の担い手とみられていた 日本:太白経天(金星が180天を渡ってみえる 昼間青空の中見える)は「忠臣が君主に代わって死ぬ」予兆 日本:民話で道中、星々にであうなかのひとりが金星(天空を旅するので夜空の動きにあわせ宵の明星、すばるなど、明けの明星と移っていく) (天稚彦の物語 最初に会う白い狩衣の夕づつ、最後に会う玉の輿にのった立派な人物、明月[あかつき]の明星) (毘沙門の本地 最初に会う僧侶[ゆうづつ長庚星]、最後の方にあう2000人の供をつれ銀の輿にのった貴人[明星ぼし]) (沖永良部島の物語 最後に会う夜明け星) エリザベス1世の宮廷占星術師ジョン・ディー(生没1527-1608)の偽書だという『金星の小冊子』がある。 原題は「Libellus Veneri Nigrae Sacer」(黒い金星に捧げられた小冊子)。 グノーシス主義的には金星は悪しきもの、悪い運命をもたらすものだという。 「我が述べようとしている精霊たちの呪文は金星に関係しており、そしてそれ故に 我は、それ<精霊たちの呪文>を金星の喇叭[TUBE VENERIS]と称した。 七つの惑星の邪悪なダイモンたち[Daemones]全員が天使たちに従属させられている訳ではないが、 けれどもこの小冊子に挿入されているそれらの<ダイモンたち>は、確かに金星の支配に 従属させられていると断定されている。この理由によって我は、<この小冊子に>金星の小冊子[LIBELLUS VENERIS] と表題を付けた。何故ならこの小冊子は、我がその叙述を始めようとしているその惑星<金星>にこそ捧げられるべきもであるからである」 (『金星の小冊子』 リーベル出版 P119 []は筆者の挿入) (1580年6月4日にロンドンで書いたとか) 金星の統治天使はアナエル。 金星と地球の位置関係は、8年周期でほぼ同じ位置をとる。 金星が地球にもっとも接近するのは、金星が太陽と地球の間にきたいわゆる内合のときで、 その距離はおよそ4200万キロメートルで、すべての惑星のなかでもっとも近くなる。 金星は地球にもっとも近い惑星である。また金星はその大きさも地球と近似している(直径1万2104km 質量は地球の81.5%)。 公転軌道が金星の軌道と交差する小惑星「金星横断小惑星」というものがあるが、 イカルス、アポロ、ファエトン(パエトーン)など神話に関連した名称がある。 2012年6月6日 朝7:10頃〜午後13時47分頃 金星日面通過(太陽面通過 ヴィーナス トランジット) みかけ上、太陽の30分の1の大きさで、黒い点が太陽を横切るように通過する。 首都圏は曇天であったが、筆者も終了間際に晴れた太陽を観測できた。金星もみた…はずである。 参考資料 ・日本大百科全書 (小学館) ・ アネモネの花になったアドーニス―水星と金星の伝説 (太陽・月と惑星の伝説) ・ (偽)ジョン・ディーの『金星の小冊子』―テクストの校訂と翻訳、そしてこのテクストの注釈のために必要なキリスト教カバラおよび後期アテナイ学派の新プラトン主義の研究 他 関連項目一覧
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