世界の歴史、伝承の武器。後期旧石器時代、紀元前BC12000年頃から現れたともいう。ほぼ全世界にみられる。
遠くから高い命中率で攻撃できるというのは狩猟においても軍事においてもすばらしく威力を発揮した。
オーストラリア先住民(アボリジニ)やタスマニア先住民には伝わっていない。弓矢以前の投槍器(スピアスローワー)は存在する。
インドネシア側やトレス諸島の人々と行き来もあり、弓矢も見聞きしていたはずだが、導入されなかったようだ。
狩猟において投げ槍、投石から弓矢への発展は大きな変化だった。
それまでの道具とは格段に命中精度・威力・携行性(弾数も)などが優れていたはずである。
伝承では源為朝は弓矢で船を沈めている。
矢を発射するより先に石などを発射する「弾弓」が発生したと考えられるようだが(BC6世紀に中国で軍用にも使われていた)、
弓矢の方が広く普及し現代まで至る。
初めて2種類以上の機能・性質を有する部品(弓と弦)を組み合わせた器械といえる。
狩猟で使われる場合「仕掛け弓」もあった。
また「毒矢」も狩猟上発生した発明である。
現在でも伝統的生活をする少数民族の多くが弓矢での狩猟、漁撈を行う。
また弓は鳴らして音をだすことにも用いられ弦楽器の元になったといわれる。
古代-中世の神話伝承には名のある弓が登場したり、神々と弓を関連づけたものがあった。
また虹のことをレインボウrainbow(雨+弓)といったり、「ルー神の弓」といったり、アフリカの神話でも、神の武器は虹の弓に雷の矢、という伝承がある。
英雄譚には少なからず、弓の名手の伝説・物語がある。神話や軍記物語では弓の名手の出番がある程度存在する。やはり弓の名手は花形である。
日本の「扇の的」は屈指の名場面と思われる。(弓を誰に射させるか決まるまではなんとなくダチョウ倶楽部っぽい)
また日本では梓弓など儀式に使われるものも残っている。
弓は、構造の違いで、単弓(単材弓 セルフボウ)、複合弓(強化弓 ラップドボウ)、組合せ弓(合成弓 コンポジットボウ)などの区別がある。
また大きさも様々で、威力を求めれば大きく強い弓になり、騎馬上で用いるものや機動性を求める場合は半弓とか短弓というような小型のものを用いた。
騎馬民族が使う弓はおおむね小型である。
世界的には早い時期に弩(ど、いしゆみ)・クロスボウの原型が発明され、紀元前BC5世紀頃の古代ギリシャのガストラフェテールや、
同じ頃中国で弩(ヌー)が使用されていた。日本では弩(おおゆみ AD700-1100年頃?)として伝わったが普及しなかった。
弩の類は、弦をひくのに器械を使うなど労力が必要だったが、射程・威力・命中精度において弓を上回り、銃火器が普及・発展するまで長く使われた。
連射のきく弓が改良され、クロスボウより用いられることもあった(イギリスのロングボウ)。
弓とクロスボウは共に銃火器の補助的用途があって生き延びたが、銃火器が弓の補助を必要としなくなって以降は、軍事で用いられることはなくなったといえる。
現代では狩猟や競技(アーチェリー、弓道)、神事・祭事に用いられるなど限定的になったといえるだろうか。
参考資料
・
武器事典 (新紀元社)
・世界大百科事典 (平凡社)
(C) 幻想世界神話辞典 - GENSO SEKAI Myth dictionary